「みみをすます」150㎜ 1996 (桂、胡粉彩色、絹糸)
耳を澄ますことは、ただ受け身に聞くことではない。耳を澄ますと聞こえてくるさまざまな音や声を、私への呼びかけと聞き取り、その呼びかけが私の耳を通して、私のこころのなかで統べ合わされ、私のなかに世界が立ち現れる。その立ち現れ様は一通りではない。時々に、また人その人による。その世界は、人その人の世界であり、誰も踏み込むことのできないただひとつの世界である。耳を澄ますことは、創造的な行いである。
(1996年から2000年ごろまで、木彫胡粉彩色による御所人形風の作品を制作していた。文章は、手製本の作品集に掲載した、その当時のまま。)