「世界樹」~人形集第四集~02
「世界樹」270㎜ 1996 (桂、胡粉彩色、絹糸、革)
北ヨーロッパの神話に、ユグドラシル(Ygdrasil)という木のことが語られている。ユグドラシルはこの世界を支えている大きな木である。この木は世界の真ん中にそびえていて、この木が繁っているうちは世界は栄え、この木が枯れればこの世は滅びるという。このユグドラシルとはなんだろうか。世界の存在を支えているものとはなんだろうか。
存在するというためには、まずそれを認める者がいなければならない。認める者とは、生き物のことである。人にとっては人である。そして人は、誰かの認めている世界に生きているのではなく、ほかならぬ私(人その人)が認めている世界に生きているのである。逆さにいえば、誰かが世界の存在を認めても、私が認めなければ、私にとって世界は無い。しかし、私にとって世界が無いならば、私もまた無い、ということになってしまう。
ユグドラシルとは私、つまり、人その人のことではないだろうか。私が生き生きとしていれば、世界も生き生きとし、私が滅びれば私の世界も終わるのである。そしてこの私というユグドラシルは、私の幼児的世界に根をはっている。
(1996年から2000年ごろまで、木彫胡粉彩色による御所人形風の作品を制作していた。文章は、手製本の作品集に掲載した、その当時のまま。)