「河童」~杉田明十志人形集 第一集~ 12
12「河童」(20cm 1992)
頭手足は石塑粘土、アクリル絵の具、胴は縫いぐるみ。着物は古い木綿。
九州に残っている話しです。
人形は人間のように働いて、一晩のうちにお社を建ててしまいました。
さて、用がすんでしまった木偶人形でも、一度命を得たものを壊すわけにもいかないので、甚五郎は木偶たちに、「陸には人が暮らしているからおまえたちは川で暮らせ」と云いました。木偶が、「川でなにをたべたらいいか」と尋くと、「人間の尻子玉でもたべろ」と云いました。
河童の手を引っ張ると、両手がつながってすっぽりとぬけると云います。河童がもとは木偶人形だからです。
河童と人形は縁があります。
『折口信夫全集 第三巻』(中公文庫)のなかの「河童の話」に、こんな一節がありました。
「両手が一時に抜けたとは言はぬが、あいぬのみんつちに似過ぎる程似てゐる。夏祓へに、人間の邪悪を負はせて流した人形が、水界に生を受けて居るとの考へである。中にも、田の祓へには、草人形を送って、海・川へ流す。」
海のむこうにはあの世がある、という考えがあります。あの世で命をもらった草人形はこの世にもどってきて川や沼に入り、自分たちを流した者たちを、じっ、とみているのかもしれません。