「不如帰兄弟の話」~杉田明十志人形集 第一集~ 03
03「不如帰(ほととぎす)兄弟の話」(13㎝ 1992)
昔二人の兄弟があった。兄は良い心だったが、弟は悪かった。ある日二人は別々に山仕事に出かけた。
兄は帰り道で山芋を掘ってきた。帰って山芋を炉で焼いていたが、弟の帰りが遅いので、自分は茎元のうまくないところを食べて、弟には根元のうまいところを残しておいた。
弟が帰ってそれを食べると大変美味かった。しかし弟は根性が悪いので、自分にくれるものがこんなにうまいのだから、兄貴はもっとうまいところを食ったに違いないと思い、兄を殺してしまった。そして、腹を割いてみるとうまくない茎ばかりが出てきた。
弟は後悔し、兄が死んだときに飛び出していった魂を探しに出かけた。毎日毎日泣き歩き、弟はとうとう不如帰になってしまった。いまでも「あちゃとてた、こちゃとてた(あっちへ飛んでったか、こっちへ飛んでったか)」と鳴いているそうである。