百影堂のブログ

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「瓜子織姫」~人形集第三集~09

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「瓜子織姫」 220㎜ 1995 (桂、胡粉彩色、縫いぐるみ胴、草木染正絹手織り生地)

 昔々、おじいさんとおばあさんがありました。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗い物にいきました。おばあさんが洗い物をしていると、どんぶらどんぶらと大きな瓜が流れてきました。瓜はおばあさんのもとに流れてきました。おじいさんが帰ってきたらいしょにたべようと思い、おばあさんは瓜を持ち帰り、お櫃にしまっておきました。
 おじいさんが帰ってきて、さあ瓜をたべましょうと、お櫃をあけますと、なかには小さな女の子が生まれていました。ふたりはこの子を瓜子姫と名づけ、だいじに育てることにしました。
 瓜子姫は日に日に大きくなりました。おじいさんとおばあさんはでかけるときにはいつも「ここいらには天邪鬼という悪いのがいるから、誘われても遊びに出てはいけないよ」といいました。
 ある日のこと、ふたりがいつものようにでかけますと、戸を叩く音がしました。天邪鬼でした。「むこうの柿の木に柿がいっぱいなっているからとりにいこう」というのです。瓜子姫が「叱られるからいやだ」というと、天邪鬼は瓜子姫をむりやりにつれだしてしまいました。
 柿の木のもとにくると、天邪鬼は瓜子姫に「おまえ上って採れ」といいました。天邪鬼は瓜子姫の採る柿をたべたいだけたべると、瓜子姫の着物を剥いで自分で着て、瓜子姫を木の枝に縛り付けました。そうして家にもどり、瓜子姫のふりをして機を織り始めました。
 おじいさんとおばあさんの帰る道々、機の音が聞こえてきました。しかしいつもと違って軽やかでないのです。ぎっこん ばったんときしむのです。おかしいな、と思いながら家につきました。「今帰ったよ、さあ、苺を買ってきたからおあがりなさい」という間もなく、瓜子姫は苺を口に詰め込みました。はて、様子がおかしいな、病気なのかしら、と思いましたが、姿は瓜子姫なのです。すると、屋根の上でからすが鳴きました。「ウリヒメノイチゴヲ アマンジャクガタベテル、ウリヒメノイチゴヲ アマンジャクガタベテル」。おじいさんが外に出てみますと、向こうの柿の木に瓜子姫がぶらさがって泣いているのです。さては天邪鬼のしわざ、と取つてかえして天邪鬼を引つ張り出すと、足を二頭の馬に結びつけ、馬を走らせて股を裂き、脇の蕎麦畑に捨ててしまいました。それで蕎麦の茎は赤いのだそうです。
(瓜子姫の昔話には、瓜子姫が殿様に嫁いりする話し、また、瓜子姫が天邪鬼に殺される話しなど、さまざまあります。)